事業再構築補助金とは?

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事業再構築補助金の目的

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応すべく、新市場進出(新分野展開・業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰など、中小企業の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とした補助金です。

令和2年度第3次補正予算で1兆1,485億円、令和3年度補正予算で6,123億円、令和4年度予備費で1,000億円、令和4年度第2次補正予算で5,800億円という巨額の予算を計上。令和4年10月5日までに15,132者の応募があり、7,745者が採択されています。

事業再構築補助金の補助対象者・補助対象事業

事業再構築補助金の補助対象者は、日本国内に本社および補助事業の実施場所を有する中小企業です。法人はもちろん、個人事業主でも申請できます。下表の通り、中小企業に該当するかどうかは、業種・資本金・常勤従業員数によって判断されます。

なお、下表の定義に該当する企業であっても、大手企業が実質的に経営に参画している場合(みなし大企業)や自社が議決権50%以上を有する子会社を複数経営しており、同一の申請回に親会社・子会社両方が申請する場合(みなし同一法人)などは、補助対象外となります。

また、「新市場進出(新分野展開・業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰など、中小企業の思い切った事業再構築を支援する」という補助金の目的に叶わない、単なる既存事業の規模拡大、既存事業と同じ顧客向けの新製品・新サービス開発などの事業に取り組みたい場合も対象外となります。原則として、既存事業とは市場も顧客も共に大きく変わる、新規事業へのチャレンジが対象になると考えてください。

事業再構築補助金の支援枠・補助率・補助額

事業再構築補助金には、成長枠、グリーン成長枠、卒業促進枠、大規模賃金引上促進枠、産業構造転換枠、最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠という7つの支援枠が設けられおり、補助率(投資した経費の何割が補助されるか)は1/3~3/4、補助額は申請枠および従業員数によって変わりますが、100万円から最大最大1億5,000万円まで補助されます。

申請枠 補助率・補助額 申請枠の目的
成長枠 補助率1/3~2/3補助額最大7,000万円 成長分野への大胆な事業再構築に取り組む中小企業等を支援
グリーン成長枠 補助率1/3~2/3補助額最大1億5,000万円 研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14 分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援
卒業促進枠 補助率1/3~1/2補助額成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる 成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ支援
大規模賃金引上促進枠 補助率1/3~1/2補助額最大3,000万円 成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援
産業構造転換枠 補助率1/2~2/3補助額最大9,000万円 国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築を支援
最低賃金枠 補助率2/3~3/4補助額最大1,500万円 最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等の事業再構築を支援
物価高騰対策・回復再生応援枠 補助率1/2~3/4補助額最大3,000万円 業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等、原油価格・物価高騰等の影響を受ける中小企業等の事業再構築を支援

事業再構築補助金の補助対象経費

事業再構築補助金で補助対象となる経費は大前提として、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応規模の投資を含むものであり、補助事業の対象として明確に区分できるものと定められています。その上で、経費の必要性および金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できる以下の経費が補助対象として認められます。

経費区分 具体的な内容
建物費 補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫などの建物の建設・改修に要する経費
機械装置・システム構築費 補助事業のために使用される機械装置、工具・器具・ソフトウェア・情報システムの購入・製作・借用に要する経費
技術導入費 補助事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費
専門家経費 本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費
運搬費 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
クラウドサービス利用費 クラウドサービスの利用に関する経費
外注費 補助事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負・委託等)する場合の経費
知的財産権等関連経費 新製品・サービスの事業化に当たって必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用、外国特許出願のための翻訳料等の知的財産権等取得に関連する経費
広告宣伝・販売促進費 補助事業で開発・提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費
研修費 補助事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費
廃業費 廃止手続費・解体費・原状回復費・リースの解約費・移転移設費用

なお、補助対象経費は、交付決定を受けた日付以降に契約(発注)を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものに限ります。また、応募審査で補助金の主旨に沿った事業計画を策定しているか確認し、評価の高いものから補助金交付候補者として採択されますが、採択されたことをもって、応募時に計上している経費がすべて補助対象として認められるわけではありません。採択の後に行う交付申請手続きの審査時に、経費区分に該当しないと判断される場合は、補助対象外となってしまいます。

事業再構築補助金の申請プロセス

事業再構築補助金の申請プロセスは、下図の通り、公募要領確認→申請書類準備・事業計画書作成→申請→応募審査→採択→交付申請→交付審査・交付決定→補助事業実施期間→実績報告・確定検査→補助金の請求・支払い→事業化状況報告という11段階に分かれています。

事業再構築補助金に限らず、補助金は原則として「後払い」です。まずは自社で資金調達を行い、投資をして、事務局の確認をクリアして、ようやく補助金が振り込まれることになります。あくまで目安ですが、申請までに約1~2ヶ月、応募申請の結果が出るまで2~2.5ヶ月、交付申請に2~3ヵ月、補助事業実施期間が3~10ヶ月、実績報告に2~3ヵ月程度の期間を要するため、補助金を申請してから最短でも10ヶ月程度、長ければゆうに1年を超える期間を要することも珍しくありません。

また、事務局の混雑状況によっても、所要期間は変わってきます。事業再構築補助金の交付申請で実際に起こったことですが、第1回~第3回で採択された事業者がなかなか交付申請を行わず、そのまま第4回、第5回、第6回と公募が続いていった結果、第6回の交付申請のタイミングに、締切が目前に迫った第1回~第3回の交付申請が集中してしまい、補助金事務局がパンクするということがありました。その結果、交付申請に半年以上かかるケースが続出したのです。

このような事態を避けるためにも、事業者の皆さんには、計画的かつスピーディーに、そして、慎重かつ正確に申請手続きに取り組むことを強くオススメします。