事業効果および賃金引上げ等状況報告書とは
補助金入金の1年後に提出を求められるのは、事業効果および賃金引上げ等状況報告書という書類になります。指定された期日までに報告書を作成し、補助金事務局に提出するのが、小規模事業者持続化補助金の交付を受けた事業者の義務です。補助事業から撤退してしまった場合や補助金を受け取ってから倒産してしまった場合も例外ではありません。提出方法は電子または郵送となっており、電子申請をした事業者は、事業効果および賃金引上げ等状況報告書も「jGrants」からの電子申請することになります。
事業効果および賃金引上げ等状況報告書の記載項目
事業効果および賃金引上げ等状況報告書には、事業実施期間中の成果や賃金引上げの実績、雇用状況の詳細を記載することになります。交付決定通知書、実績報告書、補助事業終了から1年間の月別売上高と総利益がわかる確定申告書類や決算書、応募時の経営計画書を準備した上で作成に取り掛かりましょう。以下、事業効果および賃金引上げ等状況報告書の中で、特に重要な記載項目について解説します。
補助事業終了から 1 年間の事業成果(概要)
補助事業で実施した販路開拓や生産性向上のための取組内容を簡潔に記述した上で、それぞれどのような効果があったかを説明します。虚偽報告はいけませんが、可能な限り前向きな効果を洗い出し、補助金活用の意義や価値を強調するのが望ましいでしょう。また、効果は「月間問い合わせ件数20%アップを達成」「月間製造量1,000個増加を実現」など、数字を交えて具体的に記述するとよりわかりやすくなります。
補助事業がもたらした効果等① 売上高 / 売上総利益
補助事業を実施する以前と実施してから1年後について、売上高と売上総利益(売上高から売上原価を差し引いたもの)の変化・推移を示します。数字をちょろまかすわけにはいきませんので、実態をありのまま示すしかありません。数字の変化・推移は文章で伝えるよりも、グラフで示した方がわかりやすいので、可能な限りグラフ化してください。また、増減率も計算して、別枠に記入すると良いでしょう。
補助事業がもたらした効果等② 事業場内最低賃金(賃金引上げ枠)
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠では、「補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金が申請時の地域別最低賃金より+50円以上であること」「すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+50円以上である場合は、現在支給している事業場内最低賃金より+50円以上とすること」という要件が定められています。そのため、賃金引上げ枠で補助金交付を受けた事業者は、最低賃金の引上げ状況も報告しなければいけません。報告内容によっては、証拠書類として、賃金台帳などの提出を求められる場合があります。補助事業終了時点よりも事業場内最低賃金が下がってしまった場合でも、その旨を正直に報告してください。
補助事業がもたらした効果等③ 常時使用する従業員の数(卒業枠)
小規模事業者持続化補助金の卒業枠では、「補助事業の終了時点において、以下の通り常時使用する従業員の数を増やし、小規模事業者の従業員数を超えて規模を拡大すること」という要件が定められてします。そのため、卒業枠で補助金交付を受けた事業者は、従業員の雇用状況も報告しなければなりません。報告内容によっては、証拠書類として、最新の労働者名簿などの提出を求められる場合があります。従業員数が減り、小規模事業者に逆戻りしてしまった場合でも、その旨を正直に報告してください。
きちんと対応しなければ補助金返還も
実際のところ、補助金が無事入金されると安心して、事業効果および賃金引上げ等状況報告書のことなどすっかり忘れてしまう事業者が多いです。日々忙しさに追われて、補助金事務局からのメールを見落としてしまうケースも頻発しています。しかし、指定された期限までに事業効果および賃金引上げ等状況報告書を提出しなければ、最悪の場合、補助金返還を求められることになりますので十分注意してください。
なお、繰り返しになりますが、最低賃金や従業員数の状況は正直に報告しましょう。経営状況が厳しく、賃金を引き下げざるを得ない場合や、従業員の退職や採用難の状況に陥る可能性もあるでしょう。しかし、補助金の主旨は賃上げや雇用の維持であるため、「仕方ない」では済まない場合もあります。事務局から確認が入った場合には、正確かつ誠実に現状を説明し、将来的な賃上げや採用活動継続意向を示すことが重要です。その場しのぎの虚偽報告は厳に謹んでください。
以上、小規模事業者持続化補助金での、補助金精算払い後の手続きについて解説しました。補助金入金から1年後のことですので、忘れてしまうのも無理はありません。しかし、忘れたまま放置してしまうと、補助金返還という最悪の事態になりますので、十分注意してください。