小規模事業者持続化補助金の事業実施

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特別枠で交付決定を受けた場合の注意事項

まずは、特別枠で交付決定を受けた事業者が注意すべきポイントを解説します。特別枠で補助を受けるためには、文字通り特別な要件が設けられています。その要件を達成できなければ、採択されていたとしても、補助対象から外れてしまうため十分注意しましょう。以下、申請枠ごとの注意事項です。

賃金引上げ枠で交付決定を受けた場合

賃金引上げ枠で交付決定を受けた事業者は、補助事業終了時点で、事業場内の最低賃金が申請したときの地域別最低賃金より50円以上増えていなければなりません。なお、申請時点ですでに50円以上多い賃金を達成している場合は、申請時点の直近1ヵ月で支給している賃金より、50円以上増えている必要があります。この要件を達成できなければ、補助金は交付されません。達成できているか否かは、賃金台帳などの種類を提出して証明します。

卒業枠で交付決定を受けた場合

卒業枠で交付決定を受けた事業者は、補助事業終了時点で、常時働く従業員数が小規模事業者として定義する従業員数を超えている必要があります。小規模事業者として定義する従業員を超えた数とみなされる従業員数は、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)が6人以上、サービス業のうち宿泊業・娯楽業は21人以上、製造業やその他の業種は21人以上です。この要件を達成できなければ、補助金は交付されません。達成できているか否かは、労働者名簿などの書類を提出して証明します。

なお、会社役員や個人事業主本人および同居の親族従業員は従業員とは見なされません。また、申請時点で育児休業中・介護休業中・傷病休業中または休職中の社員、期間限定で雇用されている従業員、通常の従業員より短い時間で雇われている従業員も対象外となるので注意しましょう。

インボイス特例の適用を受けた場合

インボイス特例の対象者は、2021年9月30日から2023年9月30日の間で一度でも免税事業者であった、または免税事業者であることが見込まれる事業者です。これらの事業者の中で、適格請求書発行事業者としての登録を受けた事業者が適用対象となり、補助上限額が一律50万円上乗せされます。

インボイス特例ですので、補助事業終了時点でインボイス登録が完了していなければ、当然適用されません。インボイス登録が完了しているか否かは、適格請求書発行事業者の登録通知書の写し、登録申請データの受信通知などの書類を提出して証明します。インボイス登録にかかる期間は、おおよそ1ヵ月から1.5ヵ月程度です。混雑状況によっては、さらに時間がかかる可能性があるため、交付決定を受けたらすぐに登録しましょう。

経費支出についての注意事項

小規模事業者持続化補助金の経費を支出する際は、証拠となる経理書類の作成・発行・管理が必須となります。経理書類に不備・不足があると、補助金の交付を受けられなくなる可能性があるため、補助事業の手引きなど補助金事務局が発行するマニュアル逐一確認しながら対応しましょう。証拠として揃えなければいけない経理書類は以下の通りです。

見積書・相見積書

まず、物品やサービスの価格を事前に確認するために見積書が必要です。宛先・取引先・購入する物品・サービスの名称・数量・単価・金額・日付の記載が必須となるため、必ず入れてもらいましょう。1件あたり100万円(税込)を超える場合は相見積書が必要です。中古品を購入する場合は、金額に関わらず複数者からの相見積書が必要になります。見積書が用意できない場合には、代わりに選定理由書という書類を作成し、提出することになりますが、「提出すれば100%認められる」というわけではありません。

発注書・申込書・契約書

物品やサービスの購入に関しては、発注書・申込書・契約書などの書類が必要になります。購入する物品・サービスの名称・数量・単価・金額などは、見積書の記載内容ときっちり一致させるのが望ましいでしょう。また、交付決定日から事業実施期限までに発注・申込・契約した物品・サービスのみが補助対象となります。交付決定前や事業実施期間終了後の日付では補助対象外となってしまうため、発注のタイミングや書類の日付には十分注意してください。

納品書・完了書・検収書

発注した物品・サービスが無事納品された証拠として、作成・発行します。納品されたタイミングで業者から納品書や完了書を発行してもらい、その書類に記載された内容と実際の状況に不一致がないかを確認。発注通りに納品されていることが確認できたら、事業者から業者に検収書を発行するという流れです。そのため、「納品書に日付が検収書よりも後になっている」ということがないよう、日付の記載に注意してください。

請求書・支払証明書類

納品・検収まで完了したら、続いて支払いフェーズに入ります。その際にはまず、業者より請求書を発行してもらいます。請求書に記載する購入した物品・サービスの名称・数量・単価・金額などは、見積書の記載内容ときっちり一致させるのが望ましいでしょう。それらに加えて、税抜・税込の請求金額・支払先・支払条件が明記されている必要があります。

小規模事業者持続化補助金における支払方法は、銀行振込が原則です。振込が完了したら、金融機関から振込明細書を発行してもらいましょう。クレジットカード払いにする場合は、実施期間内に口座からの引き落としが完了していなければなりません。また、小切手・手形による支払い、相殺による支払いは不可となっています。その他、仮想通貨・クーポン・特典ポイントなどの利用も一切認められていないので注意しましょう。

証拠写真

必要に応じて、証拠写真の提出を求められます。店舗やウェブサイトの改修・リニューアルをした場合は、改修前と改修後の写真がそれぞれ必要になるので、忘れずに撮影しましょう。改修後の写真は後でどうとでもなりますが、改修前の写真を撮影し忘れると取り返しがつきませんので、改修前の写真が用意できなけえば、改修が行われたことを確認できず、補助金の交付が行われない可能性がありますので、十分注意してください。

その他

小規模事業者持続化補助金を活用して、チラシやパンフレットの作成・配布を行う事業者が多いですが、その場合、配布先のリストの提出が求められます。事業者がリストを作成・購入するなどして配布する場合は問題ありませんが、配布先まで代行業者に依頼する場合は、リストの入手が可能か確認しておかなければなりません。

<br> 以上、小規模事業者持続化補助金の事業実施について解説しました。「採択されたら一安心」ではなく、「採択されてからが本番」ということがよくお分かりになったのではないでしょうか。事業実施期間中は、後に提出を求められる様々な書類を作成・管理する必要がありますし、特別枠で採択された場合は、その申請要件をクリアしなければなりません。申請手続き以上に注意すべきポイントが多いと思いますので、慎重に対応していきましょう。