一般的な補助金申請のプロセス
上図は一般的な補助金・助成金申請のプロセスをまとめたものです。すべての補助金がこのスケジュールで進むわけではなく、補助金によって一部のプロセスがなかったり、別のプロセスが追加されたりすることもあります。あくまでより汎用性の高い例であるとご理解ください。この申請プロセスのなかで、特に重要なポイントをいくつかピックアップし、その詳細や心がけるべきポイント、注意すべきポイントなどを解説していきます。順にみていきましょう。
申請書類準備・事業計画書作成
申請書類の種類
申請に必要な書類はミスなく、漏れなく、しっかり準備する必要があります。提出を求められる書類としては、事業計画書や損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、確定申告表、法人事業概況説明書などの決算書類、履歴事項全部証明書などが多いですが、補助金が定める要件によって、使用する様式やページ数が定められていたり、決算書類でも直近年度だけで良いときもあれば、2~3期前まで求められることがあったりと、色々異なる点もあるため、公募要領で確認するようにしましょう。
事業計画書作成
事業計画書の提出が必須となる補助金では、その作成に最も注力しなければいけません。事業計画書は、事業者が考えた事業プランを審査員にプレゼンテーションする極めて重要な資料です。補助金によっては、事業計画書の記載例が公開されていることもありますが、確実に採択を目指すのであれば、記載例を上回る水準の資料を作成し、他の事業者に差をつけたいところです。
ひと味違う事業計画書を作成する上で重要になるのは、自社を取り巻く市場環境や競合他社のリサーチ・分析結果、資金調達計画、収益計画、キャッシュフロー計画、生産計画、人員計画、進行スケジュールなどを、数値を交えて、具体的に記載することです。そうすることで、事業の実現性や収益性の高さを審査員にアピールすることができます。事業にかける情熱、夢、志しはもちろん大切ですが、精神論一辺倒にならないよう注意しましょう。
なお、事業計画書作成に際しては、経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)のサポートを受けることができます。認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会、商工会議所、銀行・信用金庫などの金融機関、民間コンサルティング会社など)のことです。認定支援機関のサポートを受けることで、より精度の高い事業計画書を作成することができますので、ぜひ活用してみてください。
交付申請
ものづくり補助金や事業再構築補助金では、審査に合格して採択されたとしても、補助金の交付が確約されるわけではありません。採択後、交付申請という手続きを行い、再度事務局の審査を通過しなければ、交付予定額も決まりませんし、事業を実施することもできません。
交付申請とは、簡単に言えば、事業計画書に記載した経費について、見積書や相見積書、工事図面、設計図面などの資料を提出し、その金額の妥当性を示す手続きです。あくまで一般論ですが、交付申請にはおおむね2ヶ月程度の期間を要すると考えてください。しかし、提出した書類に不備・不足があると、事務局から差し戻され、訂正・追加の上、再度申請を行うことになります。そのため、不備・不足が多いと、何度も差し戻し対応を求められることになり、審査完了まで非常に長い時間がかかることになります。
また、採択された経費であっても、交付申請の審査で認められず、交付予定額が減額されることもあります。この点から見ても、ものづくり補助金や事業再構築補助金では、「採択されたら安心」というわけではなく、「採択されてからが本番」考えておいたほうが良いでしょう。
事業実施期間
交付申請の審査をクリアし、交付決定が下りたら、いよいよ事業実施期間に突入します。補助金によって期間は異なりますが、おおむね6~12ヶ月程度と考えてください。原則として、補助されるのは、事業実施期間中に発注・納品・支払が完了した経費のみです。その前後に発生してしまった経費があったとしても、補助対象としては認められません。
また、事業実施期間中には、発注書・契約書・納品書・請求書・銀行振込証明書・領収証といった経理書類をきちんと回収・管理しておくこと、ビフォーアフターの画像を撮影しておくことが必須になります。なぜなら、事業完了後、証拠としてそれらの提出を求められるからです。
経理書類の場合、漏れがあっても、業者に依頼して発行してもらうことは可能でしょう。しかし、画像はそうはいきません。例えば、店舗改修工事を実施した場合、工事前のスケルトンな現場画像を撮影しておく必要がありますが、うっかり撮影を忘れてしまったら一巻の終わり。二度と撮影することはできず、店舗改装工事の経費が一切補助されなくなることになります。非常に恐ろしいですね。十分注意しましょう。
実績報告
実施期間中にすべての事業を完了させたら、実績報告という手続きが始まります。実績報告とは、事業が完了した証拠として、報告書、経理書類一式、ビフォーアフターの画像などを提出する手続きです。補助金事務局はそれらを細かく確認・精査して、「補助事業が適切に行われているか」「補助対象経費が適切に支出されているか」をチェックします。状況によっては、現場に立ち入り検査が入ることもあり、実績報告の審査は年々厳格になっている印象です。補助金の不正受給問題が相次いでいますので、その影響であることは間違いないでしょう。
交付申請のときと同じく、実績報告の提出資料に不備・不足があった場合は、事務局から差し戻しされ、訂正・追加をした上で再度申請することになります。通常は2ヶ月程度で完了しますが、差し戻し対応が何度も繰り返されると、その分、審査に時間がかかってしまい、補助金の振込も遅れることになります。資金繰りにも影響が出てくる可能性があるので、可能な限り円滑に進めていきたいところです。
また、事業実施期間の項にも記載しましたが、必要な経理書類やビフォーアフター画像を提出できなければ、その経費については一切補助を受けられなくなる可能性もあります。支給される補助金を計算に入れて、融資を受けたり、投資を行ったりした事業者にとっては、今後の経営を揺るがす大問題に発展してしまうでしょう。そんな事態を避けるためにも、補助金事務局が発行している公募要領やマニュアル、手引きを逐一確認しながら、慎重かつ正確に対応していきましょう。
<br> 以上、補助金申請の流れとスケジュール感について解説しました。ご覧の通り、補助金申請の手続きは多岐に渡り、ルールも複雑。申請から補助金が振り込まれるまで、半年から1年以上かかることもあります。しかし、事前にどういうプロセスがあり、何をしなければいけないのかをしっかり把握し、計画的に手続きを進めていけば、スムーズかつスピーディーに手続きが進んでいくはずです。BIZ JAPANは、補助金の申請の川上から川下まで、丁寧に伴走サポートしますので、「自力で申請する自信がない…」という事業者の方はぜひお気軽にご相談ください。