審査のポイント
ものづくり補助金、事業再構築補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金という国が管轄する4つの代表的な補助金に共通する審査のポイントを整理してみました。補助金の目的や主旨によって、重視されるポイントに違いはありますが、以下のようなポイントをしっかり抑えることで、より採択に近づくことができるはずです。順番に見ていきましょう。
審査のポイント① 事業の実現可能性
事業計画の通りに事業を遂行し、成果を上げられるかどうかを測る重要な審査基準です。事業計画書には、可能な限り具体的な目標とそれを達成する手段を記載します。「1年後の売上20%増加」「5年後の付加価値額5%上昇」「1日あたりの製造量10%増加」「地域内の新規雇用10名」など数値で示すことが特に重要です。また、それを達成する手段についても、必要な工数や人数を明確にした上で、進行スケジュールや役割分担まで記載できると良いですね。
また、「事業の遂行に必要な各種許認可などを取得している」「資金調達について取引金融機関と融資の相談ができている」「有資格者や実務経験者がいる」といったポイントも、実現可能性の高さを示すポイントになりますので、しっかりアピールしましょう。反対に、これらのポイントに不安・懸念がある場合、マイナス評価につながる可能性がありますので、申請前に可能な限りクリアしておきたいところです。
一にも二にも、審査員に「この事業計画は成果が期待できる」と感じさせることが重要ですので、数字を交えて具体的に、事前準備も周到に、より説得力のある事業計画をまとめることを心がけましょう。
審査のポイント② 事業の社会的意義
申請した事業計画を実現することで、「社会や地域に対して、どのような好影響を及ぼすことができるか」という点が審査のポイントになります。具体的には、地域経済への波及効果、雇用創出、デジタル化推進、労働生産性向上、環境負荷軽減など、補助金を管轄する省庁や自治体が目指す政策と合致していることが重要です。
もちろん、「社会的意義」と言っても、中小企業や個人事業主の取組で実現できることには限界があるでしょう。事業計画書に壮大なことを書く必要はありません。小さなことでも構わないので、補助金を活用して自社を成長・変革させることで実った果実を、地域の経済や雇用に反映させていく意思を示すことが重要です。
審査のポイント③ 事業者の経営状況・財務状況
実現可能性の部分にも通じますが、どれだけ素晴らしい事業計画を持っていたとしても、それを実現する経営リソースを有していなければ、絵に描いた餅です。経営リソースとは、ヒト・モノ・カネの3つ。特にカネの状況は審査をする上で非常に重視され、決算書類で細かくチェックされます。
他の解説記事でも度々触れていますが、補助金は原則「後払い」です。補助金をもらって事業を行うのではなく、まずは自分で資金を調達し、事業を実施して、そこで支出した経費の一部が戻ってくるという流れになります。そのため、財務状況が極めて悪く、客観的に金融機関からの融資を期待できる状況になく、
事業の実現に必要な資金を自前で調達できないと判断されれば、当然評価は大きく下がります。
加点項目
加点項目とは、「この要件を満たせば、審査の際に得点がプラスされます」という事項のこと。補助金の審査は加点方式で実施されることが多く、得点をいかに積み上げていくかが重要になります。そのため、適用できる加点項目はすべて申請するようにしましょう。
経済産業省が管轄するものづくり補助金では、第12次から第15次における審査結果が公表されています。その資料によると、「加点が1つもない事業計画を提出した事業者」の採択率は34.4%であるのに対して、「6つ以上の加点があった事業計画を提出した事業者」は74.3%も採択されています。この採択率の差を見ても、審査における加点項目の大切さがわかるはずです。
では、加点項目には具体的にどのようなものはあるのでしょうか。具体的な例として、ものづくり補助金の加点項目を見てみましょう。
ものづくり補助金での加点項目
成長性加点
成長性加点とは、事業に成長性が見込まれる場合に付与される加点項目です。「有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者」を指しています。経営革新計画とは、中小企業が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する経営計画書です。
政策加点
政策加点とは、国の政策に沿う取り組みを行う事業者に対する審査上の加点です。政策加点は全部で12個の加点項目があります。
・創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)
・パートナーシップ構築宣言
・再生事業者
・DX認定事業者
・健康経営優良法人認定
・技術情報管理認証制度
・J-Startup/J-Startup地域版
・グリーンに係るパートナーシップ構築宣言
・J-クレジット制度
・GXリーグ
・カーボンフットプリント(CFP)
・事業継続力強化計画認定の取得事業者
災害等加点
災害等加点とは、有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者が対象となる加点項目です。
事業継続力強化計画とは、主に中小企業・小規模企業向けの防災・減災の事前対策計画を指します。
賃上げ加点
賃上げ加点は、申請要件以上の賃金引上げを実施した場合に加点対象となります。
女性活躍等の推進の取り組み加点
女性活躍等の推進の取り組み加点では、厚生労働省から「えるぼし認定」「くるみん認定」を受けた事業者を加点されます。
以上のように、加点項目は多岐に渡ります。各加点項目の多くは、数カ月以上前から準備して、申請して認定・認可を得なければいけないものですので、より多くの加点項目を申請するには、長期的・計画的な対応が必要になることを覚えておきましょう。
<br> 以上、補助金の審査基準と加点項目について解説しました。補助金の採択率は50~70%程度が一般的ですが、難易度が高い補助金では、20%以下になることもあります。そのため、審査基準を理解した上で、そのポイントを事業計画書に反映させると共に、適用できる加点項目をしっかり抑えていくことも重要です。BIZ JAPANでは、審査のポイントを的確に反映した事業計画書作成のノウハウを事業者の皆さんにご提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。